受託開発の課題管理にExcelが使われる理由(まとめ)
受託開発の課題管理に用いられるツールとしてExcelはとても人気があります。しかし必ずしもExcelに満足して使っているわけではなく、ベストな選択だと思われていないケースが多いようです。笑ってはいけないSIerシリーズにもたくさんのExcel逸話がでてきます。Excelは課題管理のために設計されたアプリケーションではないので当然といえば当然なのです。
では、満足していないのになぜExcelは使い続けられるのでしょうか?この疑問をもった私はTwitterで問いかけたところ、多くの回答が集まりました。受託開発の課題管理にExcelが使われる理由、としてまとめましたが、ここではその理由を大きく3つに分類してみました。
便宜上、Excelに相対するツールとしてITS (Issue Tracking System 課題管理システム) という言葉を使っています。バグ管理やプロジェクト管理も含め、専用のツール、システムという意味で使用します。
Excelを使う理由の分類 - 何よりも手軽だから!
1. 誰でも開ける、使える
- 大規模になるほど利害関係者も沢山(ITに弱い人も多い)
- おエラい様方でも見られる
- お客様も開ける形式じゃないとダメ
2. 導入が簡単
- 操作方法の説明がいらない
- ユーザー管理不要
- ITS は導入、開始までのハードルが高い
- ITS は学習コストがかかる
3. ネットワークセキュリティの懸念不要
- ネットワーク越しにアプリケーションを操作できるようにするのはセキュリティ上の不安がある
- ITS では、客側にもアクセスの準備をしてもらう必要がある
4. いろいろな意味で使いやすい
- スケジュールと課題管理と改版履歴を1ファイルで扱えてファイルサイズも小さい。他ツールへの情報活用(コピペ)が容易に出来る
- (管理表として)方眼紙みたいで使いやすい
- メールに添付出来て会議で配布し易い
- 印刷するといい感じの書類になる
- 報告用の文書を兼ねたい
Excelを使う理由の分類 - 受託開発の現実に合っている!
5. 報告書が作成しやすい
- おエラい様方への状況報告が必要
- Excel集計関数による分析
6. データ表示の「柔軟性」が高い
- まずい情報を非表示とかで簡単に消せて、履歴も残らないから証拠隠滅が簡単
- お客に見せる情報(課題)とプロジェクトで共有する課題が違う
- タテマエとホンネを使い分けたい
7. 一括処理が容易
- 何言いたいのか意味不明な文を書く人が多く、それらを一気に直す作業が多い
Excelを使う理由の分類 - 今までどおりでいいじゃん!
8. 他のツールをよく知らない
- ITS についてよく知らない
- ITS を使ったことがない
- 目的に応じてツールを選ぶ能力がない
その他にも「技術者だから手作りしたい。専用ツール導入してるとPM能力不足と自白してるみたい。」「フリーのものは信頼できない」といった理由がありました。
Excelをやめるには
プロジェクトの規模や特性によってExcelを使うことが最適解である例もあると思います。なので、課題管理にExcelを使うのは絶対にやめるべきとは考えていません。しかし多くのケースにおいては課題管理のために設計された専用ツール(ITS)を使った方がプロジェクト全体の効率を上げ、成功に導けるのではないでしょうか。
ではどうしたらExcelをやめられるでしょうか?
まず「何よりも手軽だから!」については、プロジェクトの目的を考えるのがいいと思います。プロジェクトは成功させるものであって、それには労力や変化が伴ないます。手軽だから、みんなから不満が出ないから、お偉いさんが満足するから、といった近視眼的な理由で、プロジェクトのとても重要な部分である課題管理ツールを決めるべきではありません。
プロジェクトを成功させるという大局的観点から選ぶべきです。それを決めるのはプロジェクトマネージャーなのか、プロジェクトオーナー(顧客、発注側)なのか、あるいは他の誰かなのか、組織やケースによって異なると思いますが、いずれにせよプロジェクトを成功させたいと思ったら、課題管理ツールの選定はもっと真剣に考えるべき部分ではないでしょうか。成功に向けた熱意が必要です。
次に「受託開発の現実に合っている!」ですが、特に「タテマエとホンネを使い分けたい」という理由については難しいところです。理想をいえば、顧客側と開発側の間に強固な信頼関係があり、課題管理システムを共有することです。タテマエとホンネを使い分けることなく課題を共有し、オープンにプロジェクトを進める方が失敗も早期に分かり、修正も早期に行えるので、成功につながりやすいはずです。
現実はどうなのでしょうか?これはまた別の大きなトピックなので詳細は割愛しますが、さまざまな理由があり、顧客とは課題を共有せずに、都合のいい部分を抜き出して定期的に報告をしているといったプロジェクトが多いのが現実でしょう。これを打開するには、顧客側から課題の共有を要求するのは一つの手かもしれませんね。顧客側の立場が強いことが多いでしょうから。
最後に「今までどおりでいいじゃん!」については、市場全体が成長する段階においては有効な方法の一つであったのかもしれません。しかし、危機が叫ばれて久しいSI業界においてはとても危険な考え方です。新しい技術、ツール、製品、サービスを学び、既存のExcelによる管理と比較した上で、Excelの方が効率が良いと判断するのであればよいですが、ただ面倒だから、時間がないからという理由で、今までどおりの方法を続けるのは避けるべきだと思います。
IT による効率化
テクノロジーを活用して効率化できる手段があるのにそれを選択せず、手でチマチマ仕事をして、それで仕事をした気になっている人たちを見ると私はイライラしてしまいます。課題管理にExcelを使うことについても同じように感じることがあります。効率化できる手段は最大限に活用して、仕事をこれまでよりも短い時間で終わらせ、より良い結果を残し、「デスマーチ」なんかとは早くおさらばして欲しいと切に願います!
(上述しましたが、Excelが絶対ダメと考えているわけではないです。念のため。)
p.s
記事が二重投稿になっていたのでいじっていたら、せっかく頂いていたコメントが消えてしまいました、、、
スクリーンショットを貼り付けておきます。