ウェブサイトの翻訳、多言語化。Smartling の良い点、悩ましい点などについて

弊社アトラシアンはオーストラリアに本社がありますがグローバル企業なので、ウェブサイトも多言語化しています。もちろん基本として英語サイトがありまして、それを、スペイン語、ドイツ語、フランス語、日本語、ロシア語、韓国語に翻訳しています。

以前の記事「一人ジャパン」をどのように運営しているのか?にて、その多言語化のプラットフォームとしてオープンソース CMS の Magnolia を使っていることをご紹介しました。(ちなみにアトラシアンジャパンについて現在は、日本法人を設立し社員数は 11 名になっています。)

その後も Magnolia は引き続き英語サイトの運営に使用されていますが、翻訳については最近では Smartling.com というプラットフォームを使っています。アトラシアン日本語サイトも先日から Smartling を利用してコンテンツを提供するように変更しました。

Smartling とは

Smartling は翻訳プラットフォームを提供するサービスです。そしてその機能の一つに Global Delivery Network (GDN) があり、それについては彼らのウェブサイトから引用すると

The Global Delivery Network acts as a proxy for requests for localized pages; by detecting the language being requested, it delivers language and locale-appropriate content in real time.

というものです。つまり誰かがあるページの、例えば日本語を見たいと要求すると、Smartling がプロキシとして動作し、リアルタイムにそのページの日本語コンテンツを表示させるのです。見ている側には全く普通のウェブサイトと変わりなく、Smartling が動いているのを意識することはありません。この GDN を弊社では主に使用しています。

ではコンテンツの翻訳 (一つ一つを string と呼びます) そのものは誰が行うのかというと、もちろん自分でもできますし、外部の翻訳会社へ委託することもできます。

またワークフローを設定できるので、外部の翻訳会社が翻訳したあとに、公開する前に社内でレビューするプロセスをいれることなどもできます。

翻訳をする際の実際の画面はこんな感じです。String ごとに翻訳していきます。

良い点

どんなサービスでもそうですが、しばらく使っていると良い点や悩ましい点がでてきます。

弊社はオンラインのマーケティング、セールスが中心のため、ウェブサイトのコンテンツ量が非常に多く、その更新頻度も非常に高いです。これまでの Magnolia 環境では日本語サイトはオリジナル英語サイトとは言わば別のサイトであるため、一度提供した翻訳コンテンツが基本的にはずっとそのまま表示されていました。私が変更を行うまではコンテンツが変更されませんでした。そのため、翻訳が追いつかなくなってくると、古い翻訳コンテンツがそのまま表示されていたりしたことが時々ありました。

一方 Smartling は上記したようなプロキシの仕組みを使っているので、その時点で最新の情報を表示させることができます。また、オリジナルの英語コンテンツが少しでも更新された場合、違う string として認識されますので、その新しい string に対して翻訳が行われていないとやはり英語がそのまま表示されます。

ここで Smartling の良い点ですが、(英語になってしまうかもしれないが) オリジナルサイトの情報を忠実に伝えられるという点です。オリジナルサイトに更新があって、それをフォローしきれなくても、少なくとも古くて間違った日本語翻訳が表示されることはありません。(なお、Smartling には cache という機能もあるので、それを on にしておけば、ある時点での翻訳コンテンツをずっと表示させるということも可能ではあります。)

また、ハイパーリンクがある word は翻訳入力窓が別になるので、違った word にリンクをはってしまうというような間違いが起きることはありません。この点においても情報の正確性が高いです。

悩ましい点

悩ましい点は、良い点のまさにトレードオフです。オリジナルの string に 1 word でも変更があるとまた string 全体の翻訳をやり直さなければいけません (翻訳メモリから候補が呼び出されるので、一から翻訳をやり直すというわけではないですが)。弊社のようにコンテンツが大量にあり、更新も頻繁な場合はかなり面倒です。放っておくとウェブサイトにどんどん英語のコンテンツが増えていってしまいます

また、string の検索にちょっとクセがある感じがします。慣れるまでは欲しい string を見つけるまでに苦労しました。詳細な説明は省きますが、ワークフローのステータスが異なると検索結果に表示されない、日付で検索できない、翻訳メモリの都合で URL での検索が必ずしもうまくいかない、など。

それから、Smartling においてはコンテンツのローカライズが少々面倒です。例えば日本語サイトだけスクリーンショットを差し替えたい、リンク先を変更したい、ときなど。できることはできるのですがソース HTML に手を入れる必要があります。その方法は Smartling サポートに掲載されていますのでご参照ください。"Create Localized Content"

ただし、上記の点は私が使っている状況においてですので、誰にでもあてはまることではないと思いますのでご注意ください。

その他

Smartling の説明をしましたが、弊社では Bitbucket や SourceTree といった製品インターフェイスの翻訳にはまた別のサービスである Transifex.com を使っています。こちらはどなたにでも翻訳に参加いただけるようにオープンにしてありますので、ご興味がございましたらぜひアカウントを作って試してみてください。

他にもいろいろな翻訳プラットフォームがあると思いますが、Smartling を使用している方や検討中の方、それ以外にも何かの参考になれば幸いです。