エンタープライズにおけるセルフサービス

昨日、参加したXP祭りの懇親会で、@hiranabeさんがこんな感じのことをおっしゃった。「営業がいないというアトラシアンのビジネスモデルが日本でも通じるのか興味がある」。(アトラシアン = 私が勤めている会社)

私はこんな感じのことを言いました。イケアのように、徹底したセルフサービスにする代わりに、高品質な製品を安く手頃な価格で販売するというモデルが、日本でも受け入れつつあるので、アトラシアンも成功する可能性はあると思っています、と。

もっとも、単純にイケアのようなコンシューマー向け製品と、アトラシアンのようなエンタープライズ向け製品を比較することはできません。ただ少なくとも日本人は、「日本の製品が過剰で不要なサービスとセットになっており、その分値段が高くなっているものが多い」ことに気付き始めたと言えるのではないでしょうか。
いえ、元々気づいていたけれど、今まではイケアほどに徹底した方針で安く販売する企業がなかったのだと思います。昨日のUXセッションの言葉を一部借りると、「イケアがセルフサービス、高品質、低価格商品のバーをあげた」と思います。

日本の商習慣

日本のエンタープライズ市場には「商習慣」という得体のしれない大きな壁が存在するのも事実です。アトラシアン製品を世界市場でみると8割以上が直接販売です。ユーザー企業がウェブサイトで直接発注して直接クレジットカードなどで支払って購入していくのです。ただしご存知の通り、日本ではそのような習慣がありません。ユーザー企業はグループの購買企業やSIer、既存取引のある企業などを経由して購入するのが通常です。理由は銀行口座、リスクの所在、商習慣などいくつかあると思います。
したがって私たちも今のところ直接販売のルートを作っておらず、全てパートナー経由での販売としています。
私が注意しているのは、「高品質な製品をセルフサービスで提供することにより、手頃な価格で販売する」という基本姿勢を崩さないということです。日本市場向けに細かい修正は必要だと思いますが、基本姿勢を忘れずにいたいと思います。

何をセルフサービスにするか

製品の説明をセルフサービスにする、購入手続きをセルフサービスにする、製品のお届けをセルフサービスにする、製品の導入作業をセルフサービスにする、製品のカスタマイズをセルフサービスにする、購入後のサポートをセルフサービスにする、さまざまな可能性があります。それぞれにメリット、デメリットがあるので比較検討すべきだと思います。

一方、最近ガートナーからこんな記事もでていました。
Gartner Highlights Four Myths Surrounding IT Self-Service

「ITセルフサービスにまつわる4つの神話」、です。たとえば、神話:ITセルフサービスはコストを削減する。現実:ITセルフサービスはレベル1サポートを削減する、といった感じです。ここでは主にサポートにおけるセルフサービスについて論じているようです。

ちなみに、アトラシアンは営業をセルフサービスにしています。いわゆる営業部隊というものがありません。セールスフォースドットコムのようなCRMを使って、顧客に電話をかけて、販売へつなげていくという行為がありません。そこにかける費用をカットし、その分製品を安く販売しています。サポートももちろん、オンラインマニュアルやFAQといったセルフサービス化できるところはしていますが、顧客満足度をあげるために、リソースを割いて手厚く行っている部分です。