マクロ・スターの悲劇

プロジェクトの課題を管理するためにExcelを使っているチームがありました。Excelの標準機能だとやりたい管理ができないので、メンバーのAさんはマクロを使いカスタマイズをしました。使いやすくするためにその後もカスタマイズは続けられました。

ITSの台頭

一方、世の中ではITS(Issue Tracking System:課題管理システム)やBTS(Bug Tracking System:バグ管理システム)と呼ばれるツールが、多くのプロジェクトやチームで使われ始めました。ソフトウェア開発における課題管理の重要性が高まるにつれ、ITSはどんどん使いやすくなり進化をしていたのです。

Aさんのチームにおいて、極度にカスタマイズされたExcelが10年ほど使われたその頃、プロジェクトの若手メンバーBさんがコミュニティの勉強会に参加し、ITSについての知識を仕入れてきました。そして、プロジェクト内でそのシステムと、カスタマイズされたExcelを比較したところ、ITSを使った方が明らかに便利で生産性があがり、失敗も少なくなるであろうことが分かりました。

しかし、メンバーAさん(48歳。今ではマネージャー)はちょっと困った顔をしています。なぜかというと

  • Excel課題管理システム」を社内の他のプロジェクトにも広く紹介し、浸透していて、それが「普通」になっているので、変えるのが面倒(スイッチングコスト)
  • もしかしたら、そのITSを採用することにより、課題の管理を行っていた担当者の仕事がなくなってしまうかもしれないという(本末転倒な)心配
  • ITSの操作を理解できない(理解しようとしない)メンバーがいるかもしれない
  • (自分の作ったマクロへの愛着)

結局

というわけで、マネージャーAさんの意向と、「どっちでもいいけど、俺は忙しいから協力はできないなぁ」という他のメンバーの意見により、明らかにメリットがありそうなITSの採用は見送られ、マクロでカスタマイズされた課題管理表が引き続き使われることになりました。

、、、

その後の「マクロ・スター」の悲劇はお話しするまでもないでしょう。生産性の低い開発環境で、国内外の競合他社との戦いに勝ち残れるほど甘い時代ではもはやありませんから!


ではここで一曲。The Buggles による "ITS Killed Macro Star" をどうぞ!

、、、ではなくて、普通に "Video Killed Radio Star" - The Buggles 聞いてくださいw (♪あーわ、あーわ、のところを聞くとBugを見つけて慌ててる様子がいつも目に浮かぶのですw)