ソフトウェア開発業界の動向、規模。経済産業省の調査結果から抜粋 (平成22年度)

3月23日に経済産業省から情報通信業基本調査の結果が報告されていた (調査は総務省と共同) 。調査対象は平成22年度 (22年4月〜23年3月) なので1年以上前のものであり、やや古い感じもするが、大きな流れを読む参考にはなるだろう。なぜ調査が平成23年度ではなく22年度のものであるかというと、平成23年度は1年間を使って調査を実施し、結果をまとめているからだ。

私はソフトウェア開発に携わる仕事をしているので、この調査結果の中での興味対象はソフトウェア開発である。ソフトウェア開発に関わる調査結果を順番に抜粋していく。詳細は調査結果の原本 (平成23年情報通信業基本調査確報−平成22年度実績− PDF) を参照のこと。なお、この調査結果は何でこんなに分かりづらいんだと思うほど分かりづらい。理解に間違いがないよう努めたが、もし間違っている部分があったらご指摘ください。

全体概要

まず第1章のアクティビティベース結果というものを見てみる。これは2章の主業格付けベース結果と異なり、「情報通信業が主業ではないが情報通信業も営む企業」も含まれているので私の目的にかなっている。図表1−1−1 全体概要 を見るとソフトウェア開発に関連のありそうな業種は、ソフトウェア業とインターネット附随サービス業だ。(情報処理・提供サービス業もソフトウェア開発に関連がありそうな感じもするが、こちらのページにある説明を読み、該当しないと判断し対象から外した。)

それぞれの当該業種売上高(アクティビティに係る売上高)を見ると、前年度と比較しソフトウェア業は11.6%増加、インターネット附随サービス業は13.5%減少となっている。インターネット附随サービス業の減少は意外な感じがする。(ただし、インターネット附随サービス業の当該業種売上高ではなく、通常の売上高を見ると77.7%と大幅に増加している。この違いが具体的にどこからくるのかは、分からなかった。)

企業数はそれぞれ2.2%、1.4%増加となっている。また、従業者数はそれぞれ9.2%、52.6%と、特にインターネット附随サービス業で大幅に増加している。

次に図表1−1−9 利益の状況 を見てみる。営業利益は、ソフトウェア業21.4%増加、インターネット附随サービス業65.0%増加となっている。

図表1−1−12 労働生産性、労働装備率、労働分配率の状況 を見てみる。労働生産性は両業種において改善している。ソフトウェア業2.8%増加、インターネット附随サービス業27.2%増加となっている。


業種別:インターネット附随サービス業

第2章 電気通信業、放送業、第3章 放送番組制作業、はソフトウェア開発との関係性が低そうなので省略し、第4章インターネット附随サービス業を見てみる。

下記のとおり、サービス内容を基準とした分類になっており、どこまでをソフトウェア開発としてカウントしていいか分からないため、合計値だけ参考にする。企業数は79.4%増加、売上高は35.5%増加となっている。

人材育成の状況は前年度と比較して向上しており、その内容まではわからないが、悪くはないように見える。


業種別:情報サービス業

次に第5章 情報サービス業 を見てみる。この章がソフトウェア開発という観点からすると、もっとも興味深い章だ。

「主業格付けベース」というのは、企業を売上高が最も大きい業種に格付けしたものなので、「アクティビティベース」の方を見るのが良さそうだ。アクティビティは7つに分類されているが、受託開発ソフトウェア業、組込みソフトウェア業、パッケージソフトウェア業、ゲームソフトウェア業、の4つがソフトウェア開発に該当すると思われる。

企業数は受託開発ソフトウェア業、ゲームソフトウェア業において増加しており、組込みソフトウェア業、パッケージソフトウェア業において減少している。売上高も受託開発ソフトウェア業、ゲームソフトウェア業において増加しているが、中でも受託開発ソフトウェア業は34.0%増加と著しい。1企業当たり売上高も同様に増加している。受託開発あるいはSIerの衰退といった話があちらこちらで聞こえてくる中で、この調査結果は意外だ。もっとも冒頭に書いたようにこの結果は1年前のものなので、直近の1年間の状況は反映されていないため、次回の結果がとても気になるところだ。

上記の4業種だけを抜粋し、売上高をパイチャートで表すと下記のとおりになる。第4章で説明のあったインターネット附随サービス業を合わせてはいないが、それは合計売上高でも1,173,638(百万円、22年度)であり、受託開発ソフトウェア業の2割以下の数字である。

ソフトウェア開発の業界で、受託開発ソフトウェア業が売上高の点において圧倒的なシェアを占めていることが言えそうだ。

おわり